<対談インタビュー>
hacomonoの成功を支える
スイッチサイエンスが協力したIoT開発
危機的状況を乗り越えてつかんだ大成功
― 開発中に苦労したこと、トラブルに見舞われたエピソードがあれば教えてください。
岩貞:やはり半導体不足の問題ですね。Raspberry Piがどこに行っても手に入らず、代替が見つからない状況は結構厳しいものでした。その点でスイッチサイエンスさんを選んで良かったと感じています。事前に300台ほどの量産をお願いしていたおかげで、半導体不足の中でも商品を作り上げることができました。トラブルにはなりませんでしたが、内心は結構ドキドキしていました。
九頭龍:そうですね、最初の初速に関しては確保できましたが、その後がかなり大変でした。ただ、先にお金を頂いてから確保して納品しますという話がスムーズに進んだので、我々としてはスタートアップとのビジネスはやりやすいと感じました。
岩貞:もう一つ大きな出来事として、金型製作を委託していたプロトラブズの日本撤退がありましたね。あれはタイミングがもう最悪でした。例えば、金型製作が始まる前なら、「あ、これは大変だ。他を探そう」という対応ができるかもしれないんですけど、実際に金型を製作し、50回ぐらい試し打ちしていました。すでに受注も始まっていましたし、残りの250台分どうするのっていう...。本当に厳しかったですね。
九頭龍:逆に300台分打てていたら、まだどっしり構えられたかもしれない。そしたらとりあえず300台分あるからその間に対策を考えようっていう時間的余裕があったのでしょうね。
岩貞:そうそうそう。50はちょっと...みたいなね(笑)でも切迫した状況の中ですぐに代替先を探していただいて、そのプロトラブズの金型を無理くり繋ぎ合わせて流用していただいたおかげでイニシャルコストも下がりましたし、何とかクリアできてホッとしました。無理難題を受け入れてくださったスワニーさんにも本当に感謝しています。一時はどうなることかと思いましたが、良い提携先を探していただき感謝しています。
共同開発したIoT QRリーダーの実物
― 様々な困難を乗り越えられたわけですが、プロジェクトを通してどのような成果がありましたか?
岩貞:まず、プロジェクトを通じて形成されたIoTチームが挙げられます。プロジェクトがスタートしたときは私1人でしたが、1年後には10人ほどのチームに成長し、今では約14人のメンバーがいます。これにより、内部での連携が強化されたことは大きいですね。
そして何よりもプロジェクト自体が大成功を収めました。IoT QRリーダーは非常に好評で、台数は非公開のためお伝えできませんが、想定を超えた台数が販売されています。もちろん「hacomono」システムの一環としてのデバイスですが、これ単体で見ても、アーリーのスタートアップを上回る売り上げを達成していると自負しています。当初はこんなにも売れるとは想像できませんでしたが、実現できたことは本当に嬉しいです。
九頭龍:今回開発したIoT QRリーダーは主にRIZAP社が展開するchocoZAPで導入されていると思いますが、chocoZAPをはじめとする無人のフィットネスジムが急速にフィットネス市場に進出し、現在市場全体をけん引している中で、hacomonoさんがその流れにうまく乗れたことがプロジェクトの成功につながったのでしょうね。
岩貞:それが「hacomono」の一つの強みであると思っています。元々フィットネス市場がそれほど大きくないため、中小規模の店舗だけでは難しいんです。大規模なお客さまを引き寄せることができたことは、プロジェクトにとって重要な要素でしたね。
それに「hacomono」自体も、日本のフィットネスシェアの文脈で見ればそこそこの規模になっています。フィットネス分野に絞ると、売上上位10社のうち9社がhacomonoを導入しています。黒子的な存在なので、あまり「hacomono」という名前は出てきませんが、市場全体で控えめながらも確実に存在を感じていただいています。
― スイッチサイエンス視点ではいかがでしたか?
九頭龍:3点あります。まず、岩貞さんがフィットネス業界の「黒子」と言われたけれど、我々もテクノロジー業界、特にエレクトロニクス分野の「黒子」なので存在感が薄い。だからこそ外部にきちんとアピールすることが大切なんです。今回、こうやってお話できたこと自体が一つの成果だと思っています。
次に、量産に結びついた部分ですね。他にも受託開発企業がたくさんある中で、プロダクトを持っているように見えても、実際は受託開発がメインで事業を維持していることがよくあるんです。そして、どの企業も量産に進むプロジェクトを手に入れたいと思っているけれど、実際はPoCどまりが多いんですよね。そんな中で、今回こうやって量産に進むことができたのは非常に嬉しいことです。もちろん、hacomonoさん自体のビジネスが順調だからこそ、量産も順調に進めることができたので、そういう意味ではまあ慧眼だったなと(笑)。
最後に、スイッチサイエンス社内での個別の成果として、今回は私もプロジェクト的に黒子で参加させてもらいました。hacomonoさんが初期のコスト削減の意思をお持ちだったので、コストが大きい人間は引っ込んだという一面もあるんですが、同時に生産管理を担当した当社の社員にも経験を積ませたいという意図がありました。彼は今回が2件目のプロジェクトで、まだまだ主担当としての経験が浅い状態でしたが、非常に価値ある経験を得ることができました。感謝しています。