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AI特化SBC RDK-X5, X3のベンチマーク YOLOv8nで140FPS超え 

AI特化SBC RDK-X5, X3のベンチマーク YOLOv8nで140FPS超え 

スイッチサイエンスの高須です。普段は深センを拠点に、現地の面白い技術やボードを日本へ紹介しています。

今回、中国のD-Robotics社から最新のRDKシリーズ(X3 / X5)に関する詳細なベンチマークデータを入手しました。これを皆さんに公開するとともに、定番のRaspberry Pi 5(RPi5)と何が違うのか、どう使い分けるべきかを考察します。

RDK X5 公開ベンチマーク:YOLOv8 / YOLO11の実力

ベンチマーク条件についてはGithub上で公開されています。
 Githubのリンク、CPUレイテンシ、モデルサイズ別などまとめたスプレッドシート

D-Robotics RDK X5 8GB  ¥26,180

D-Robotics RDK X3 4G ¥16,610

CPU推論では、モデルや解像度、量子化の有無によって大きく変わりますが、Raspberry Pi 5単体ではYOLO系のリアルタイム推論に限界が出やすく、公開例でも数FPS〜十数FPS程度に留まるケースがあります。また、外付けNPUを使った場合でも、接続方式やモデル、前処理・後処理を含むかどうかで実効FPSは大きく変わります。

その中で、RDK X5がYOLOv8n-poseで143.1FPSという数値を出している点は、安価なSBCとして注目できます。単にCPU性能で押し切るのではなく、BPUを前提にエッジAI推論を組み込むという、同社SBCの設計思想が表れている部分だと思います。

 

143.1 FPS という数値の技術的な意味

ベンチマーク結果にある 143.1 FPS (YOLOv8n-pose) という数値は、単に「速い」ということ以上に、システム設計において以下の3つの実利をもたらします。

1. 制御ループの低遅延化

143.1 FPS ということは、1フレームの推論にかかる時間が 約7ms になります。(スプレッドシート内ではレイテンシも計測)
一般的な 30 FPS(約33ms)の処理系と比較して、入力から出力までのレイテンシを大幅に短縮できるため、高速に移動するドローンや、ミリ秒単位の応答が求められるロボットアームのフィードバック制御において、制御系全体の遅延を詰めるうえで、有利な条件になります。

2. マルチカメラ・マルチモデルの並列実行

1枚のボードで 140 FPS 以上の余力があるため、条件次第では、30 FPSカメラを複数扱う構成や、複数モデルを組み合わせる構成も検討しやすくなります。

  • マルチカメラ: 30 FPS のカメラ 4 台分を同時に解析する。

  • マルチタスク: 1つの入力に対して、物体検出、姿勢推定、セグメンテーションを同時に走らせる。

3. モデル精度の引き上げ

軽量な n (nano) モデルでこれだけの速度が出ることは、より大きなモデルを試す余地が生まれます。実際に30 FPSを維持できるかは、モデルサイズ、入力解像度、前処理、BPU対応状況によって変わります。

構造の違い:NPU(BPU)搭載ボードと一般的なSBC

Raspberry Pi 5 のような一般的な SBC と RDK シリーズの決定的な違いは、推論時の 「CPU の空きリソース」 です。

  • 一般的な SBC (NPUなし): CPU推論では、モデルや設定によってCPU負荷が高くなりやすい。その結果、ROS 2 の通信処理やモーターの PWM 制御といった「他の重要なタスク」が阻害され、システム全体にジッタ(揺らぎ)が発生しやすくなります。

  • RDK シリーズ (BPU搭載): AI 推論は専用の計算回路(BPU)にオフロードされるため、CPU側に制御・通信処理の余裕を残しやすい。

  • メモリ量よりもメモリ帯域:BPUやNPUはメモリとの帯域が広く、大量のモデルパラメータを瞬時にやり取りできます。一般的なSBCはメモリ容量が多くても帯域が狭いために推論処理が「データ待ち」で停滞しがちですが、RDKはボトルネックなくプロセッサの性能をフルに引き出すことが可能です。

主な用途(ユースケース)

このパフォーマンスと構造的メリットを考慮すると、RDK シリーズは以下の用途に適しています。

  • 自律移動ロボット (AMR / ドローン): 複数のカメラを用いた全周囲の障害物検知や、高速移動時の動体回避。

  • スポーツ・作業解析デバイス: 100 FPS を超える高サンプリングレートでの姿勢推定による、人の動きの数値化。

  • バッテリー駆動のエッジゲートウェイ: CPU パワーを抑えつつ BPU で効率よく推論を行うことで、消費電力と発熱を抑えたファンレス運用。

目的によって「道具」を選び分けられる自由

今回のベンチマークを見る限り、RDK X3 / X5 は「エッジAI推論をロボットや組み込み機器の中で使う」用途にかなり向いたボードだと感じます。

ただし、これは Raspberry Pi 5 より常に優れている、という話ではありません。Raspberry Pi 5 はコミュニティ、周辺機器、情報量、汎用Linux環境の扱いやすさで今でも非常に強い選択肢です。

一方で、カメラ入力を使った物体検出、姿勢推定、低遅延なフィードバック制御、複数モデルの組み合わせなど、AI推論性能がシステム全体の設計に効いてくる場面では、RDKシリーズは有力な候補になります。

SBCの世界も、単にCPU性能やメモリ容量だけで比較する時代から、用途ごとにCPU、GPU、NPU/BPU、I/O、ソフトウェアエコシステムを見て選ぶ時代に入ってきたと言えそうです。

シングルボードコンピュータへの要求は多様化・高度化しているので、様々な方向性で今後も選択肢が広がってくるでしょう。とても楽しみです。

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