Jul 24 2025
USB接続なしでデータ回収
極地で活躍するWi-Fi中継デバイス

ご相談のきっかけと課題
ご相談いただいたのは、寒冷地でのドローン観測に関するデータ回収の効率化についてでした。 ドローンに搭載したロガーのデータを、USB経由で1台ずつ回収している、という運用上の課題がありました。 「できればUSBをつながなくても、データを簡単に取り出せるようにしたいんですよね」 そんなお話から、プロジェクトがスタートしました。
解決方法:Wi-Fi中継デバイスをつくる
私たちが提案したのは、USBで受け取ったデータをWi-Fiで送信する“中継デバイス”を作ること。ロガーとPCをいちいちつながなくても、データが手元に届く仕組みです。
実現にあたっては、3つの条件をクリアする必要がありました:
・Wi-Fi機能を備えていること(=無線でデータ送信ができる)
・USBホスト機能があること(=ロガーからデータを正しく受け取れる)
・観測機器の邪魔をしない、コンパクトサイズであること
そこで採用したのが、M5AtomS3という小さなデバイス。性能とサイズのバランスがちょうどよく、厳しい観測環境でも問題なく動作すると判断しました。
開発で苦労したこと
いちばんのハードルは「USBホスト機能」の実装でした。Arduinoの開発環境では公式ライブラリが用意されておらず、通常の方法では対応できません。 そのため、開発環境をPlatformIOに切り替え、USBホスト機能を持つ外部ライブラリを組み合わせて対応。試行錯誤はありましたが、無事にWi-Fiでデータを回収できる仕組みを作り上げることができました。
ソースコードを公開しています
今回の実装に使用したコードは、以下のGitHubリポジトリで公開しています。
USB CDC-ACMクラスのデバイスとM5AtomS3を接続してデータを受信・Wi-Fi送信するサンプルとして、同様の課題をお持ちの方の参考になれば幸いです。
GitHubリポジトリ:https://github.com/SWITCHSCIENCE/usb-cdc-acm

今後の利用に向けて
今回はM5AtomS3での開発を行いましたが、ドローンは搭載重量がとても限られるため、さらに軽量化を行うにはM5StampS3を使用するという可能性もあります。 いずれにしても、このUSBホスト機能によってセンサー側の電子基板を改造することなく、かつデータの回収のためにUSBケーブルを脱着する手間が無くなることで、現場での確実なデータ取得が期待されます。
まとめ
極地などの特殊な環境での運用でも、現場での課題は意外と身近なもの。USBケーブルをつなぐという一手間をなくすだけで、作業効率はぐんと上がります。 こうした“ちょっとした不便”を解決するお手伝いができたことを、私たちも嬉しく思っています。