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Raspberry Pi 5レビュー

Raspberry Pi 5レビュー

みなさんこんにちは、佐々木です。9月28日、Raspberry Pi財団から「Raspberry Pi® 5」が発表されましたね。日本国内での販売はもう少し先になりますが、一足早くRaspberry Pi 5の実機を入手できたのでレビューします。

実際に動かしながらRaspberry Pi 4から変わったところを確認しつつ気になるポイントを見ていこうと思います。Raspberry Pi 5は8GBモデル、Raspberry Pi 4は4GBモデルを使って比較しています。

Raspberry Pi 5は工事設計認証(いわゆる技適)未取得のため、技適未取得機器を用いた実験等の特例制度を利用して検証を行っています。

この無線設備は、電波法に定める技術基準への適合が確認されておらず、法に定める特別な条件の下でのみ使用が認められています。この条件に違反して無線設備を使用することは、法に定める罰則その他の措置の対象となります。

スイッチサイエンスではRaspberry Pi 5の発売は工事設計認証の取得及び表示などの対応が実施された後を予定しております。入荷の情報をいち早く入手したい場合は、Raspberry Pi 5の商品ページの入荷通知登録ボタンを押してください。

Raspberry Pi 5 / 4GB

Raspberry Pi 5 / 8GB

セットアップ

とりあえず動かしてみないとはじまらないのでRaspberry Pi 5をセットアップします。Raspberry Pi Camera V22つとUSBキーボード・USBマウス・2Kモニタ・イーサーケーブルをつなぎます。電源はラズパイ4に最適なACアダプター 5.1V/3.0A USB Type-Cコネクタ出力を使います。Raspberry Pi デバッグプローブをUARTコネクタに接続してシリアルコンソールからもログインします。USB電流計で電力も確認します。

さっそく起動

ささっとセットアップを済ませて起動しました。起動直後の画面はこんな感じ。OSはアナウンスがあったとおりDebian GNU/Linux 12 (bookworm)でした。画面右上に電源に関する通知が表示されていました。5V5Aの電源を接続しないとこのような通知が表示されるようです。

起動時間の比較のグラフ

Raspberry Pi 4と起動時間を比較したところ1.5倍ほど起動が速くなっていました。

2倍速くなった

SoCがBroadcom BCM2712に替わってCPUアーキテクチャがCortex-A76になり動作クロックが2.4GHzになりました。内蔵GPUもVideoCore VIIと新しくなり、2本同時に4K60p出力できるようになりました(Raspberry Pi 4では1 × 4K60pもしくは2 × 4K30pだった)。またメモリもLPDDR4X-4267にかわりメモリ帯域幅も大きくなっています。

UnixBench

UnixBench比較のグラフ

UnixBenchという定番のベンチマークテストではRaspberry Pi 4の2倍以上のスコアを記録しました。

Wi-Fiスループット

WiFiスループット比較のグラフ

5GHz帯Wi-Fiのスループットを計測したところRaspberry Pi 4の2倍以上のスループットを記録しました。

SDカード読み書き

SDカード読み書き比較のグラフ

Raspberry Pi 5はハイスピードSDR104モードをサポートしているため、SDカードの読み書きも速くなっていました。書き込み速度はSDカードの性能によるところなのであまり速くなっていませんが、読み込み速度はRaspberry Pi 4の2倍になっていました。SDカードを選ぶときはSDR104モードに対応したSDカードを選ぶと良いでしょう(SDHC IやSDXC I、SDUC Iなどのロゴ付きのもの)。

Youtubeで動画再生

Youtube動画再生

ブラウザを立ち上げてYoutubeで動画を再生してみました。1080@60pの動画がスムーズに再生され快適に操作できました。Raspberry Pi 4ではカクツキやマウスカーソルが重くなることがよくあったのですが、これなら普段使いでも苦にならないのでは?

アクティブクーラー(扇風機)

しばらくすると映像がカクカクし始めたので、アクティブクーラー(扇風機)で冷却することにしました。CPU温度を確認すると85度前後でサーマルスロットリングが働いたようです。サーマルスロットリング中はARMクロックが1.5GHz→2.0GHz→2.4GHz→2.1GHz→1.5GHzとたえず変化していました。アクティブクーラー(扇風機)で冷却するとCPU温度は60度程まで下がってARMクロックも2.4GHzで安定しました。Raspberry Pi 5の性能をフルに発揮するにはしっかりとした冷却が必要のようですね。

HEVC 4K動画再生

HEVC動画再生

続いてHEVC 4K動画を再生してみました。FHDモニタにつないでいるため、画面出力は2Kです。htopコマンドでCPU負荷をモニタしながら再生してみましたが、ほとんど負荷はあがらずなめらかに再生できました。

デュアルカメラ

デュアルカメラ

Raspberry Pi Camera v2を2つつないで同時にプレビューしてみました。CPU負荷は高くなく安定して動作していました。

カメラディスプレイポート

CSIカメラとDSIディスプレイのコネクタは小さく共通化され、ステレオプラグがあった場所に移動しました。2 × CSIカメラまたは2 × DSIディスプレイといった接続が可能になりました。DSIディスプレイを接続する時は専用ケーブルが必要ですが、CSIカメラはRaspberry Pi Zero用カメラケーブルが使えます。

H.264エンコード

H.264エンコーディング

Raspberry Pi 5にはH.264のハードウェアエンコーダが搭載されていないようです。カメラ画像の録画ではソフトウェアによるH.264エンコードが行われていました。FHD30pのH.264エンコードではCPU負荷は40%~90%と、とりあえず実用になりそうな値でした。MJPEGだともう少し負荷が下がりました。

Raspberry Piのソフトウェアエンジニアリングのディレクターがエンコードに関するコメントに次のようにリプライしていました

問題は、ビデオエンコーディングが標準化されていないということです。Pi 1、2、3、および4では、ビットレートに対するエンコーディングの品質が比較的低かったです。プロセッサを使ってこれを行う利点は、品質とビットレートのバランスを自分で選べることです。もちろん、電力消費が欠点ですが、実際にはデフォルト設定で1080p60をエンコードするのに1つのプロセッサしか必要ありません(これはPI 4のハードウェアエンコーダよりも品質が良いです)。適切な設定で、4Kのエンコードを約24fpsで行うことが可能かもしれませんが、まだその方向に最適化していません。

将来的に何かしらの対策を講じる必要がありますが、Pi 5に関してはハードウェアエンコードがちょっと遠すぎると感じています。

翻訳:ChatGPT

消費電力

消費電力のグラフ

最後にいくつかのユースケースで消費電力を測定しました。グラフの横軸はmWです。アイドル時の消費電力はRaspberry Pi 4と変わらないところはグッドですね。最大負荷では約8Wほど消費していました。全体的に消費電力が大きくなっていますが、Raspberry Pi 5単体での動作であれば電源は5V3AのACアダプタで十分と言えそうです。

ただ消費電力に比例して発熱も増えるので、Raspberry Pi 5の性能をフルに発揮するためにはFANによる空冷は必須と考えておいたほうよいでしょう(2回目)。

Raspberry Pi 5用の新しいケースとアクティブクーラーの冷却性能についてこちらのポストで紹介されていました。
Heating and cooling Raspberry Pi 5

まとめ

さてRaspberry Pi 5を実際に使用しながら、Raspberry Pi 4との比較を行いました。ベンチマークテストの結果からRaspberry Pi 4と比較して2倍以上の性能であることが確認できましたね。動画再生やカメラ利用時の性能も向上していると思います。

一方で、H.264のハードウェアエンコーダが搭載されていないため、エンコード処理はソフトウェアで行われていました。また消費電力は全体的に高くフルパフォーマンスを発揮するためには冷却が必須でしょう(3回目)。

 

付録:フォトギャラリー

Raspberry Pi 5(左)とRaspberry Pi 4 B(右)。USB-Cコネクタ、HDMIポート、40ピンGPIOの位置はRaspberry Pi 4と同じですね。イーサーネットコネクタとUSB-Aコネクタの位置が入れ替わっているので、Raspberry Pi 4のケースがつかえなくなりました。

低速なIOはすべてこのRP1というチップにオフロードされたようです。BCM2712とはPCIeでつながっています。

HDMI端子のわきに見慣れないコネクタが2つ。左側はRTC用のバックアップバッテリーを接続するコネクタ、右はUART用のコネクタです。UART用のコネクタにRaspberry Piデバッグプローブを接続するとシリアルコンソールが見えます。起動時のログを確認する時に便利です。

ステレオジャックがなくなって、2 × カメラ/ディスプレイポートになりました。PoEコネクタの位置も変わっています。VIDと書かれたスルーホールはアナログビデオ出力です。

5V5Aを要求する電源。

全人類が待ち望んでいたパワースイッチが追加されました。カチカチと2回押すと電源オフします(1回目で確認ダイアログがでる)。長押しで強制電源オフします。左側のコネクタはPCIe 2.0です。M.2 HATまたその他のアダプタを接続します。

USBコネクタのうしろにFAN用のコネクタが追加されました。

表全体。

裏全体。

付録:スペック比較表

機能 Raspberry Pi 5 Raspberry Pi 4
プロセッサ Broadcom BCM2712 2.4GHz クアッドコア 64ビット Arm Cortex-A76、暗号化拡張機能、512KB/コア L2 キャッシュ、2MB 共有 L3 キャッシュ Broadcom BCM2711 1.8GHz クアッドコア 64ビット Cortex-A72
メモリ LPDDR4X-4267 SDRAM (4GB および 8GB) LPDDR4-3200 SDRAM (1GB、2GB、4GB、または 8GB)
グラフィックスプロセッサ VideoCore VII GPU(OpenGL ES 3.1、Vulkan 1.2サポート) VideoCore VI GPU(OpenGL ES 3.1、Vulkan 1.0サポート)
HDMIディスプレイ出力 デュアル 4Kp60 HDMI ディスプレイ出力(HDRサポート) 2 × micro-HDMI ポート(最大 4kp60 サポート)
ビデオデコーダ/ビデオエンコーダ 4Kp60 HEVC デコーダ H.265 (4kp60 デコード)、H.264 (1080p60 デコード、1080p30 エンコード)
ワイヤレス通信 802.11ac Wi-Fi(2.4 GHz / 5.0 GHz)、Bluetooth 5.0 / Bluetooth Low Energy (BLE) 802.11ac Wi-Fi(2.4 GHz / 5.0 GHz)、Bluetooth 5.0 / Bluetooth Low Energy (BLE)
USBポート 2 × USB 3.0 ポート(同時に5 Gbpsの通信が可能)、2 × USB 2.0 ポート 2 × USB 3.0 ポート、2 × USB 2.0 ポート
イーサネット ギガビットイーサネット(PoE+サポート、別途PoE+ HATが必要) ギガビットイーサネット(PoEサポート、別途PoE HATが必要)
カメラ/ディスプレイポート 2 × 4レーンMIPI カメラ/ディスプレイポート 1 × 2レーンMIPIカメラポート、1 × 2レーンMIPIディスプレイポート
PCIeインターフェース PCIe 2.0 x1 インターフェース(高速ペリフェラル用、別途 M.2 HAT またはその他のアダプターが必要) なし
ストレージ micro SDカードスロット(ハイスピードSDR104モードサポート) micro SDカードスロット
電源 5V/5A DC 電源、USB-C から供給、Power Delivery サポート 5V/3A DC 電源、USB-C コネクタから供給、GPIO ヘッダから供給
GPIOヘッダ Raspberry Pi 標準の 40 ピンヘッダ Raspberry Pi 標準の 40 ピン GPIO ヘッダ
その他 リアルタイムクロック(RTC)、パワーボタン、FANコネクタ、UARTコネクタ 4極ステレオオーディオおよびコンポジットビデオポート
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