ネコと楽しむ やさしい電子工作ライフ その2
こんにちは。スッチサイエンス・マーケティングアドバイザーのSHIGS(シーグス)です。
趣味で電子工作を楽しむメイカーでもあります。ただし私のテーマはいつも一つ。
「電子工作とネコ」
「最近、電子工作を始めました」「電子工作に興味はあるんだけど、何を作ったらいいのかわかりません」そんな電子工作ビギナーの方でネコを飼っていらっしゃる方もいると思います。「もしかしたら、私の『ネコと楽しむ やさしい電子工作ライフ』がお役に立つかもしれない」そんな思いでブログを書かせていただいてます。
●マイキャットご紹介
私のネコ飼い歴は、電子工作歴よりはるかに長く、20年以上になります。現在もノルウェージャンフォレストキャットとスコティッシュフォールドの2頭を飼っています。血統種にこだわったわけではなく、贔屓のネコカフェが閉店の憂き目に会い、たまたま引き取った2頭がこの品種だったというわけです。2頭ともオスの去勢ネコでともに10歳を超えています。彼らのための工作に日夜励んでおります。
↑マイキャット。左がミー(ノルウェージャンフォレストキャット)で右がハッピー(スコティッシュフォールド)。
<第2回 自動でゆらゆら揺れるネコじゃらし>
◎製作編
●今回のターゲット
ネコじゃらしはネコを喜ばす基本アイテムですが、手で動かすときにはいろいろなテクニックがあります。ゆっくり振る、激しく振る、振っては止める、ネコの気をひく動かし方は様々です。前回は回転式で表現しましたが、今回はゆらすことを基本にしたいと思います。
モチーフは花に近づく蝶々。ネコは大好きです。我が家のネコたちも、たまたま部屋に飛び込んだガやチョウの類を見つけると、もう狂喜乱舞です。市販のネコおもちゃにもその類はよくあります。いずれも、バネ性のあるワイヤーの先にネコの気を誘うひらひらルアーをつけて揺らすスタイルです。あの動きをマイコンでコントロールしてみたいと思います。
基本的な構想としては、バネ性のあるワイヤーネコじゃらしとサーボモーターをつなぎ、micro:bitとワークショップモジュールで、制御すればOKという感じです。
サーボモーターは回転式ではなく、角度調整のみのものを使います。一般に「サーボモーター」といえばこのタイプのものです。
前回は回転式で水平にネコじゃらしを動かすパターンだったので、今回は垂直に動かすことにしました。サーボモーターを横置きし、角度をつけて動かす動作を繰り返すことで、揺れを作ろうと思います。
全体としては図のような構成になります。
全体構想がまとまったところで、まずは前回と同じく、目の前にあるものだけで簡単に試作を作ることにしました。
●キーとなる電子部品
まずはmicro:bit。https://switch-education.com/products/microbit/
単純な制御にはこれ1枚で十分との結論を前回で得ています。ビジュアルプログラミングソフトMakeCodoも使いやすく、初心者にはぴったりです。単純なサーボモータの制御ならブロックの組み合わせだけですから、簡単にプログラムが作れます。
↑教育用マイコンボードmicro:bit
モーターとしてはサーボモーター(FS90)を使います。前回使った回転サーボモーター(FS90R)と形状はよく似ていますが、トリマポーテーションメーターは付いていないので、底を見ればわかります。「ベーシックモジュール用サーボモーターセット」https://switch-education.com/products/bitpak-servomotor-set/
にはFS90固定用の専用パーツが付いていて使い勝手がいいのでこれを用意しました。
↑「ベーシックモジュール用サーボモーターセット」
micro:bitとサーボモーターとの接続には前回と同じく使いました。https://www.switch-science.com/products/5489今回もスタンドアローンでの使用が前提となるので、ワークショップモジュールを利用するのが圧倒的に楽です。
↑ワークショップモジュール 。
●ワイヤーにネコじゃらしを取り付け
まずは動きさえ見られればいいので、ネコじゃらしは、市販品のワイヤーネコじゃらしを切って部品どりしました。
↑ネコじゃらしのヘッドを切る 。
材料としてポイントになるのはバネ性のあるワイヤーです。釣りのルアーなどを作るための超硬質ステンレス線(直径0.6mm)をネットで購入しました。
↑工作に使ったバネ性のあるワイヤー。
ネコじゃらしを扱っているとやじネコが寄ってきますが、今回はワイヤーを扱うので別室に移動してドアを閉め切りました。外でニャーニャー鳴いてますが、安全のためなのでやむを得ません。
☞ネコ電子工作のポイント/ネコちゃんを傷つける可能性のある材料や道具を扱うときは、彼らが侵入できない場所で行おう!
ワイヤーを約30mmにカットします。ワイヤーは細くてバネ性があるので先端が不安定で危ない感じがします。前回もお話ししたように、ネコグッズづくりの基本は何よりもネコの安全です。先端を処理しないと、工作には使えません。
まずは、ネコじゃらしと結ぶ側の先端を処理することにしました。強引に曲げて小さな輪を作り先端を下向きにします。
↑ワイヤーの先を曲げて、先端を丸くする。
こうしておけば、刺さるようなことはまずないはずです。とはいえ、先端が露出していることに変わりはないので、やはり落ち着かない感じがします。いろいろ思案した挙句、ワイヤーと同じ釣りがらみで「ガン玉」を使うことにしました。ガン玉は釣りのときに使う小さなラグビーボール型のおもりです。真ん中に溝が付いていて、ここに糸をはさんでペンチなどて押しつぶして圧着すると糸から外れなくなります。
↑釣りに使うガン玉。
同じ原理で、丸くしたワイヤーの先端を軸といっしょに適当な大きさのガン玉にはさみ、しっかり圧着します。こうすればワイヤー先端もむき出しになることはありません。
↑ガン玉でネコじゃらしとワイヤーの接続部分を圧着。
ただ見た目がイマイチなので、回転式ネコじゃらしでも使った紙製ストローを約50mmに切り、カバーしました。さらに外れないよう下の部分をグルーガンで固めました。先端を曲げ、ガン玉で固定し、カバーする、三重のガードを施しましましたので、先端も処理としては十二分かと思います。
↑紙製ストローをかぶせ、両端をグルーガンで固める。
次に、つくったネコじゃらしのついたワイヤーをサーボモーターに接続します。今回はサーボモーターセットに入っている涙目型のサーボホーンを使うことにしました。揺らすだけなので一方向に伸びていればいいのと、接続用の穴がたくさん空いているので使い勝手が良さそうに思えたからです。
ここでも最終的なカバーには紙製ストローを使うことにしました。先ほどより長めの70mmにカットしました。ネコじゃらしを垂直に立たせ、かつゆらゆらできるようにするためです。
中にワイヤーをくぐらせ、涙目型サーボホーンにつなぎます。先端は強引に内側に曲げました。
↑紙製ストローを通してから反対側の 先端にサーボホーンを取り付ける。
この部分はサーボモーターごと筐体の中に入れてしまうので、先端処理はせず、上から紙製ストローをかぶせるだけにしました。ただしカバーが抜けないよう、サーボモーターセットに入っていたネジで、紙製ストローとサーボホーンを止めます。
こうしてできたワイヤーネコじゃらし付きサーボホーンをサーボモーターにネジで取りつければ、中心部は完成です。
↑ネジで固定。サーボモーターに取り付ける。
●筐体はお菓子の空き箱
筐体にはお菓子の空き箱を使いますが、少し大きめのものを使いました。理由は上でネコじゃらしを揺らすので、どうしても起点となるサーボモーターの左右に負荷がかかるからです。筐体を安定させるにはある程度の大きさがあった方が良さそうです。また上蓋があるものを用意しました。違うネコじゃらしに替えるときなどに、処理が楽になるからです。
上蓋の中央には、サーボホーンから伸びた紙製ストローが動けるよう、幅13mm、長さ14cmの長方形の穴を開けました。
ワイヤーネコじゃらし付きサーボモーターを、筐体の下箱の中央に少し強力な両面テープで貼り付けます。揺らした感じでは筐体は安定しています。これなら大丈夫そうです。
↑下箱に両面テープでサーボモーター等を固定。
ネコじゃらしを穴から出し、上ぶたをかぶせれば工作としては完成です。
↑上ぶたをすれば完成。
●プログラムに一工夫
ゆらゆらとワイヤーを動かすには、軸の角度と動かす時間、繰り返しの回数がポイントになります。角度は、中央、つまりネコじゃらしと筐体が垂直になる位置にサーボモーターの軸が来たときを0度としました。そこを起点に向かって右側がプラスの角度、左側をマイナスの角度とします。つまり、角度の範囲としては、マイナス90度~0度~プラス90度となります。
まずは、基本となるプログラムです。各々の角度を維持する時間の方は仮に約0.2秒としました。つまり0.2秒間はその角度を維持し続けます。
角度は10度、20度、45度、90度とそれぞれ試してみました。やってみると、10度、20度では振れ幅が小さく、あまりゆらゆらしません。45度と90度を試しましたが、10度、20度の時よりは触れますが、あまり大きな差が出ません。そこで、わかりやすいように90度、つまり「90」と「-90 」に設定しました。
次に角度を維持する時間を変えます。0.2秒、0.5秒、1秒とすると結構振れ幅が違いました。どんな揺らし方にするかは好みですが、0.5秒ぐらいにすると結構いい感じの揺れになりました。このあたりはネコちゃんの反応をみながら、数字を変えてください。
完成したプログラムが下記の通りです。
☞ネコ電子工作のポイント/プログラム上のパラグラフを変えていろいろ試してみよう。試すことで最適値が見つかる。
●まずはお試し
ピンの番号、端子の位置関係を確認しながら、サーボモーターの端子をワークショップモジュールに挿します。プログラムを送りこんだmicro:bitもセットします。
上ぶたをかぶせ、ワークショップモジュールをスイッチオン。いい感じでゆらゆらしてくれました。いけそうな感じです。
ただ問題にも気がつきました。サーボモーターの取り付けを縦ではなく横にした関係で、実質的に片側にしか傾きません。しかし、揺れ方を見ていると、このままでも十分機能するように思えます。
ネコたちに披露する前に、使いかってのいいように、リモコン用にもう一個micro:bitを用意しました。書き換えたプログラムは以下の通りです。
↑送信用プログラム。
↑受信用プログラム。
☞ネコ電子工作のポイント/micro:bitの場合、2個あると1個をリモコンとして使えるので便利。
完成したゆらゆらネコじゃらしをネコたちの前におきます。おっかなびっくりで近づき、ネコじゃらし部分を手ではたいたりし始めます。そこでスイッチオン。ゆらゆら動きに最初はパッと逃げましたが、好奇心には勝てないようで再び寄ってきます。今度は盛んにネコじゃらしに反応しています。その姿にこちらも感無量です。
↑ゆれるネコじゃらしに興味津々のネコたち。
↑ネコじゃらしをつついて遊び出した。
↑最後にはネコじゃらしを押さえて寝転がってしまった。
…とはいえ、10分も遊ぶと飽きたのか、その場を離れていきました。毎度のこととはいえ、ちょっと残念ですが、まあこんなもんだろうと諦めます。しばらく時間をあけて、また使おうと思いました。
☞ネコ電子工作のポイント/ネコは必ず飽きる。10分も遊んでくれたら御の字と考えよう。
●こんな仕掛けはいかが?
毎回同じ趣向では飽きられるかと思い、違う工夫もしてみたくなりました。ネコが通りかかったときに、いきなりゆらゆらゆれたら、さらに興味を引けそうです。そこでスイッチングに人感センサーhttps://switch-education.com/products/microbit-pir-sensor/を使うことにしました。人感センサーは、動くものがあればそれに反応し、スイッチングしてくれます。検出距離は最大で5m。人を検知すると値が「0」に、検知していない状態では「1」になります。
↑人感センサー。
工作としては、センサー用の穴を側面に開けるだけです。
↑人感センサーを筐体にセット。
プログラムは以下の通りです。
センサーによって動くものが検出されると、サーボモーターを動かすトリガーになります。端子としては、P0はすでにサーボモーターで使っているのでP1を使いました。
人感センサーをワークショップモジュールにつなぎ、プログラムを送りこんだmicro:bitを挿します。スイッチをオンにして上蓋をかぶせます。
ネコがやってきました。箱に近づくと、突然ネコじゃらしがゆれます。ミーはさっと逃げてしまい、その後は近づこうとさえしません。ハッピーは最初はギョッとしながらも、その後は興味をそそられたようで、ゆれるネコじゃらしに飛びついて、遊びだしました。
↑突然ゆれ出したネコじゃらしに思わず手が出る。
こんな工夫も楽しいかと思います。
☞ネコ電子工作のポイント/工作とプログラミングでいろいろなことができる。ネコが喜ぶ工夫が何かできないか、いつも探ってみよう。
●見栄えを整える
お菓子の空き箱でも筐体としては問題ないように思いましたが、もう少し見栄えをよくしようと別のものを用意しました。料理等の保存に使うタッパーです。100円ショップに行けばいろいろなタイプのものが売っています。たいていはポリプロピレンなど比較的柔らかいプラスチック素材が使われており、加工も容易です。
上部の蓋の中央にネコじゃらしワイヤー用の長方形の穴を、側面には人感センサー用の丸穴を開け、中にシステム一式をセッティングしました。
↑タッパにーシステム一式を収納。
見栄えはぐっと良くなり、動きも問題ありません。ネコたちもよく遊んでくれました。
↑見栄えを良くした完成形。
☞ネコ電子工作のポイント/筐体に困ったら100円ショップのタッパーを一考しよう。扱いやすくて便利。
↑「もう我慢できニャい!」思わず手が出る。
飽きたら先端のネコじゃらしを変えたり、プログラムを工夫してゆらすスピードを変えるなどできそうです。いろいろ考えると、それだけで楽しくなってきます。遊ぶネコたちを見ながら、いろいろ浮かぶアイデアに思わずニヤニヤしてしまいました。(その2終わり)